精神病新聞お蔵出し「当事者研究について」
お久しぶりです。はじめましての人もいるかな?十年以上続いている老舗フリーペーパーの精神病新聞です。半年ほどおやすみしていましたが、リニューアルしてお届けしようと思ってる次第であります。
今回は当事者研究について書こうと思います。当事者研究とはべてるの家で始まった試みなのですが、早く言えば認知行動療法です。非常に効果のあるアプローチ方なので、皆さんにお伝えしようと思います。
当事者研究は問題志向です。解決志向ではないです。何が起こってるか、何が問題か。問題が問題である。と言うことです。「人と問題を分ける」ということが言われているのですが「爆発を起こす河崎君」ではなく「爆発をやめたいけどやめられない河崎君」と言う風に。さしずめ私なら「死にたい小林さん」ではなく「死にたい誤作動を起こしている小林さん」と言ったところでしょうか。
問題を眺めることにより、自分がどんな方法で自分を助けてきたのかが見えてきます。多量服薬、リストカット、爆発、マイナスのように思えるけど、すべて自分を助ける技です。それが分かってくると「そうか、自分で自分を助けていたんだ」と少し安心でき、ほかにも自分を助ける方法はないかな?と考えたくなり、自分を助けるスキルが増えていくというわけです。
当事者研究ではメカニズムを図にしたりすることが多いです。言葉だけでは相手にうまく伝わらないけど、イラストや矢印を使って図にしていくとわかりやすく相手に伝わり、自分自身でも「あ、こんな仕組みだったのか」と問題を外から眺めることができます。私も当事者研究をする際には図にしてみます。そうすると何が起きているのかがよく分かります。そうしたら、その問題に対してどうしてきたのかを考えます。引きこもった、大声を出した、とか。次にどうしたらいいのかを考えます。これは自分や支援者と考えるのもいいけど、ぜひ仲間のところに持って行くことをおすすめします。仲間からは実に様々なアイデアがでます。自分では気づかなかった新しい対処法や、仲間も同じ苦労をしていると言うこととか。また、ユーモアに富んだ意見が出て、自分がとても困っていることを相談しているのに、深刻にならず、わいわいがやがや楽しい場になります。そこが当事者研究マジックです。
自分で考えついたものや、みんなから出された対処法などをロールプレイすることもあります。みんなの前で行い、良かった点、さらに良くする点をみんなから聞きます。それができたら宿題として次回の当事者研究までに実際にやってみます。実際の場面で実験して結果をみんなに発表します。
当事者研究で重要なのは分かち合いです。みんなの前で研究することによって苦労がみんなのものになり、今まであまり話したことがなかった人でもなんだか親しくなったような気がするし、同じような苦労だったら、自分の抱えている問題の参考にもなります。弱さを知ることにより、連帯が生まれます。
きっとこれを読んだら「研究したい!」という人もいるかと思います。でも、どこから手をつけていいか分からない。当事者研究を行ってる場所を知らない、とお思いかと思います。
当事者研究には一人で行うもの、複数で行うもの、グループで行うものがあります。一人でもできます。と言っても当事者研究について全く知らなかったら進めることはできないと思うので、まず、当事者研究の本を読むことをおすすめします。
「レッツ!当事者研究」 べてるしあわせ研究所
当事者研究の理念、べてるのひとたちの研究が載っています。進め方や、当事者研究の用語についても載っており、お薦めの一冊です。
「安心して絶望できる人生」向谷地行良 浦河べてるの家
当事者研究とは表紙に書いてないけど、当事者研究の本です。パーソナリティ障害系の研究が多く載ってます。
「認知行動療法 べてる式」
当事者による研究は載っていませんが、当事者研究をより深めたい人は読んだ方がいいと思います。「こういう考えかたで、こう進められているのか」と納得の一冊です。
最初の方に書き忘れましたが、当事者研究では「自己病名」と言って、お医者さんからもらった以外の病名を自分でつけます。途中で変わっていっても大丈夫です。私も自己病名は三回変わっています。最初は「ときめき依存症 自殺願望うつ」次は「自分のコントロール障害 誤作動型 魔球系」いまは「評価依存型 誤作動起こしっぱなし 涙腺崩壊型」です。
と、言うわけで、当事者研究についてはここまで。私は別に専門家ではないので、自分で本読んだり、べてるの人と話したりして掴んだ感じをを書きました。見当違いの事書いてなきゃいいけど・・
2020年2月10日発行
最近は当事者研究が注目されていますが、私がやっていたときは、まだそれほどでもなくて、東京で行われる「べてるの集い」に参加していました。横浜でも良くやっていたので、そちらにも参加していました。べてるの家にも二週間滞在したことがあり、川村先生にも診てもらったので、その時の体験などを書いてミニコミにするつもりでいたのですが、生活保護を受けている状態でミニコミを作って販売したら収入になってしまって、怒られるのでは?と考えてしまい、発行しませんでした。精神病新聞を書かなくなったのも、生活保護になってからです。そういう活動して見つかったら役人に怒られるとビクビクしていました。生活保護は最低限のお金は与えてくれるけど、権利とか誇りとか大事なものを全て奪いますね。
最近読んだ本
「苦海浄土」石牟礼道子
水俣病患者を題材にした作品です。そうはいっても、ルポタージュではなく、一つの私小説としても読める稀有な作品。作者の方が主婦をしながら、作品を書いていて、ここまで圧倒的な作品を書く能力がありながら、畳半畳分の書斎しか持っていなかったということを知って、とても悔しかった。
小林エリコ個展(8月10日〜14日まで)*12日はお休み
会期:2022年8月10日〜14日まで(12日のみお休み)計4日
時間:12時から19時まで(10日のみ14時から)
作者在廊日:10日(水)13日(土)14日(日)
会場:ギャラリーharu
杉並区高円寺南3-42-14 フラワーコーポ103
(JR中央線・総武線高円寺駅下車、徒歩8分 ※中央線は土日は止まりません)
(メトロ丸ノ内線 新高円寺駅下車 徒歩12分)
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新しい絵もこの間、制作しました!額装して販売します。値段は1万円から2万円の間くらいです。大きさはB2です。
オンラインショップ
「タケ漫画」絶賛発売中!
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小林エリコの著作をよろしくお願いいたします。(アマゾンへの短縮URL)
デビュー作『この地獄を生きるのだ』(イースト・プレス2017)
『生きながら十代に葬られ』(イースト・プレス2019)
『わたしはなにも悪くない』(晶文社2019)
『家族、捨ててもいいですか?』(大和書房2020)
『私がフェミニズムを知らなかった頃』(晶文社2021)
『私たち、まだ人生を1回も生き切っていないのに』(幻冬舎2021)
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